
阪神淡路大震災、東日本大震災、北海道胆振東部地震、熊本地震など、私たちは災害と隣り合わせで生活しているといえます。災害はいつ、どこで、どのように発生するか分かりません。そうした緊急事態の時に、人の命を支えるのは「食」です。万が一の事態になった時にしっかり生き抜けるように、災害時の食についての知識や技術を身につけておくことも大切な食育の1つだと思います。今回は、日本食育学会から発刊されている「災害時でも健康的な食生活を!~命をつなぐ食の基本と備え~」をご紹介していきたいと思います。
命をつなぐ食べ物
災害発生直後は「とりあえず手に入るものを食べる」が原則ですが、被災期間が長くなるにつれ、とりあえずの食事では心身に溜まった疲労の回復はなかなか図れません。食材は限られてしまっていても、少しの工夫をすることで、自分や家族、周りの人が元気になる食事を作ることが可能となります。ポイントは「赤・黄・緑」3色の食材をそろえることです。また、どのような状況であっても、水分はできるだけ摂るように意識しましょう。1日あたり3lが目安とされていますが、食事からの水分を考慮すると1.5l位が目安となります。
3色の非常食
赤(たんぱく源)…缶詰(魚・肉類、豆類など)、レトルト食品、常温保存可能食品(ビーフジャーキー、魚肉ソーセージ、ロングライフ牛乳など)、保冷が可能であれば…ハム、ソーセージ、乳製品など
黄(炭水化物)…ごはん(具入りおにぎりやα化米、パックごはんなど)、カップ麺、餅、パン類、シリアル、ビスケットなど
緑(ビタミン、ミネラル)…野菜や果物、缶詰(コーン缶、フルーツ缶など)、野菜ジュース、果物ジュース、ドライフルーツなど
※お湯が使える場合には、温かい汁物で心身を落ち着かせるのもよいでしょう。
高齢者・乳幼児への配慮
【高齢者】
・塩分、糖分の摂りすぎに注意し、必要に応じてお湯や牛乳、野菜ジュースなどで薄めて食べる。
・嚥下が難しい場合には、飲み物に浸したり、交互に食べる工夫をする。
・のどの渇きを感じにくい場合があるので、水分は意識的に摂るようにする。
【乳幼児】
・離乳期の乳児には、ごはんをスプーンでつぶしたり、パンをちぎって牛乳に浸すなどして対応する。
・レトルト食品は塩分が多いものもあるので、牛乳や野菜ジュースなどでのばしてたべさせる。
・大人以上に環境の変化に敏感なので、膝にのせて食べさせるなど、スキンシップをとり安心感を与える。
衛生面への注意
ライフラインのダメージにより、通常よりも衛生管理が難しく、体の抵抗力も落ちている場合があるので、食中毒などに十分に注意するようにしましょう。
・手洗いやアルコール消毒をしっかりする。
・支給された食料はなるべく早めに食べきる。
【ボランティア等で炊き出しをする際には…】
・素手で食品を触らない・しっかり加熱する・ラップ、ポリ袋を活用する。(手袋の代用、皿に敷いて洗い物を減らす、お椀に被せて異物が入らないようにするなど、様々な使い方が可能。)
自助・共助の力を身につける
災害時に自分と周りの人の命をつなぐためには、子供たちをはじめ、1人1人が「どんな状況でも安全に食べることができる力」、「手元にある食材で命をつなぐことができる力」を身につける必要があります。これらも食育で養うべき大切な力であるのではないでしょうか。