歯科医からの食育推進

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歯科医からの食育推進

日本は平成17年「食育基本法」を、平成18年には「食育推進計画法」を制定し、国民的運動として展開を図っています。「食育基本法」の理念は、近年の国民の食生活をめぐる環境の変化に伴い、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための「食育」を推進することを課題としています。その基本的施策としては「心身の健康の増進と豊かな人間形成」、「子どもの食育における家庭、地域、学校などの役割」、「食品生産者と消費者との交流促進」、「伝統的食文化継承の支援と食料自給率向上への貢献」など、食育と幅広い分野との関係でその推進がすすめられています。

8020運動

8020運動とは、80歳までに20本以上の歯を残す、という運動です。この運動は、ようやく国民に定着してきたようですが、平成17年の厚生労働省の歯科疾患実態調査のデータでは、8010が現状のようです。それでも当初の8006から比べると加速度的に歯は残るようになってきました。「食育」の目的である「生涯を通じておいしく食べる」ことは、歯科の目的とも一致しており、食育の推進= 歯科保健・医療の推進という側面があります。「食育」における究極の目標である生涯おいしく楽しく食べるためにも、歯と口腔は欠くことができない重要な役割を担っています。
よくかんで食べる習慣を身に付け、それを維持するために、自分の歯で何でもかめるようにしておくことが大切です。そのためには、むし歯や歯周病の予防・治療を心がけ、お口の健康を保つ必要があります。

肥満、生活習慣病予防

食育の推進の目標に関する事項」の目標の一つでもある内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の予防に関る肥満や生活習慣病は、「早食い」「丸のみ」などの食べ方が大きく関与しています。小児期からの健康づくりに「食べ方」を含めた健康な食習慣づくりの推進と高齢者までの生涯にわたるライフサイクルに応じて健康診断や保健教育を介した「食べ方」の食育の推進が大切です。

「食べ方」は乳幼児期、学齢期に口の成長に伴って発達します。この時期のかみ方、飲み方、味わい方などの「食べ方」の機能発達期に本人や家庭への「食べ方」を主とした食育が必要です。食べ物は「口」から食べるのであり、食べる器官の働きとそれに伴う味わいやくつろぎなど食べ物が口に取り込まれてから飲み込まれるまでの食べ方を知識と体験を通して育むことが必要です。食べ物と食べ方の知識と体験があって初めて、食が健全な心身の糧となり、豊かな人間性を育むことができます。

将来自分の歯で食事ができるようになる為、そして生活習慣病を防ぐ為にも、毎日の食事の「食べ方」が大きく関わってきます。

噛ミング30(カミングサンマル)の推進

上記の内容をふまえ、一口30回以上かむことが望まれています。平成21年7月に厚生労働省から出された「歯科保健と食育の在り方に関する検討会」の報告書「歯・口の健康と食育~噛ミング30(カミングサンマル)」では、食育の今後の方向性が示されています。報告書には、食を通して健康寿命を延伸するためには、その基盤となる小児期から高齢期に至るまで食べる器官である口腔の健康と関連させて健康づくりの視点からの「食育」を推進していくことの重要性が示され、このような食育を推進する一助として、一口30回以上かむことを目標して、噛ミング30(カミングサンマル)の推進が望まれる、としています。

咀しゃく等の食べ方の重要性は、消化吸収を促す栄養面だけに留まりません。これまでの研究によれば、咀しゃく運動は、食物粉砕過程で生じる口腔感覚がフィードバックされることで脳の広い範囲が活動する運動であることが示されています。つまり、よくかむ運動は、脳の広い範囲を使った運動であり、食べ方の食育の観点からすると脳の発達に重要な意義を持つことが示唆されています。

また、「口」から摂取する食品に応じた食べ方(かみ方、味わい方等)を通した拡がりは、①口腔機能への拡がり②生理機能への拡がり③精神機能への拡がり④運動機能への拡がり⑤安全性への拡がりの5つの機能への拡がりが期待できそれぞれに多くの様態を育むことに寄与しています。このような拡がりを意識した「食べ方」の支援を中心に据えた食育を推進する取り組みは、食育基本法の第二条にある「国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成」に資する大きな課題と考えられます。

このように、歯科と食育には深いつながりがあります。歯科医で開催されている食育口座などにも積極的に足を運びましょう。

私達の歯は生涯にわたりとても大切なものです。虫歯や歯周病等に気を付け、よく噛み、健康的な食生活を送りましょう。

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