
子どもの給食について
学校給食は1889年に始まり、終戦後に全国に普及しました。当時は子どもの栄養不足を補うことが大きな目的のひとつで、1954年には学校給食法も施行されました。この頃の給食は、コッペパンに脱脂粉乳、そしておかずが少しついてくるようなメニューでした。その後、脱脂粉乳から牛乳に変わり、おかずの量が増えたり、コッペパンだけでなくごはんや麺類など主食のバリエーションも豊かになっています。現在では、肥満の方や生活習慣病にかかる方の増加や、偏った食事などの方も増えていることから、給食のなかに「食育」を取り入れた取り組みも始まっています。
給食のメニューは、市町村など自治体ごとに決めることができるため、地域の特徴を出していくこともできます。現在全国の95パーセント近くの学校で、給食を出しています。そのうち「パンや米などの主食、おかず、ミルク」をメニューにしている学校が約9割あり、「ミルクとおかず」や「ミルクのみ」を出す学校もごくわずかにあります。また、学校の校舎ではなく外部で給食をつくる「外部委託」を利用している学校は、全体の3分の1ほどです。材料費や人件費の高騰などもあり、少ない予算のなかで安心で美味しい給食を出すのは厳しいと言わざるを得ません。コンビニエンスストア「セブンイレブン」も給食の市場に参入し始め、グループ企業の工場でつくった給食を提供する動きも進みつつあります。
給食の安全性は?
現在アレルギーをもつ子どもが増えていますが、割合としては全国の公立小中学校の約2.6パーセントと言われています。少し古いデータになりますが、2012年度には小学校で7パーセント、中学校で3パーセントの割合で、「給食を配膳する時に、アレルギー物質が混ざった」などの、アレルギーの事故が起こっています。これを受けて、アレルギー事故を繰り返さないための、「代替食などの確認を徹底する」「緊急時の対応を明確にしておく」「おかわりをしない」などのガイドランを作成した自治体もあります。そもそも安全な食材が限られいるなかで、調理場が古くなっていたりスタッフの不足なども重なって、対応に困っている施設も少なくありません。
食中毒による事故も、毎年起こっています。施設の清掃、作業する人の消毒はもちろんのこと、衛生管理への意識を高めたり、チェック体制を改善・強化するなどの継続的な取り組みが大切です。また福島の原発事故以降、放射能による食物の汚染も心配のひとつです。2016年5月には栃木県の小学校の給食で、基準値の2倍を超える放射能セシウムを含むタケノコが提供されたとして問題になりました。この事件は、基準値を測定するのが当日であり、検査結果が分かるタイミングが子どもの給食時間の後であったことから起きてしまったそうです。これを受けて、検査は前日までに済ませるなど、対応の改善が進められています。
給食の主食となるパンは、3等級という安い小麦を使って作られています。その大半がアメリカ産であり残留農薬などの影響も心配されています。また3等級だと美味しいパンはなかなか作ることができないため、イーストフードや着色料、ショートニングなどを始め添加物も使われているのが実情です。食べ物は直接身体の中に入るものです。特に成長期の子どもにとって、危険な食べ物が及ぼす被害は計り知れません。正しい知識をもって、よい食材を提供できるように、業者だけでなく保護者なども一緒に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。