
◇食生活指針の歴史
食生活指針が最初に策定されたのは昭和60年(1985年)のことです。国民一人ひとりが食生活について考え、より良くするという目的で作られました。食生活指針は時代に合わせて内容が改訂されています。平成28年(2016年)には16年ぶりに一部改訂が行われました。
現代の日本では心臓病や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病が大きな問題となっています。生活習慣病はバランスの偏った食事や肥満が原因となるため、適度な運動を呼び掛けたり食事バランスについての項目が見直されより具体的な表記になりました。
一方で特に若い女性に多いのが過度なダイエット志向です。“痩せている=美しい”という考えのもと無理な食事制限よって摂食障害や低栄養状態に陥っているケースも多く見られます。そのため極端なダイエットには注意と呼びかけています。
食生活指針の内容は今の時代の食生活を写す鏡になっているのです。
◇食生活指針が目指すもの
上記で示したように今の日本では肥満と低栄養が同時に問題になっている異常な事態です。どちらも表面上は穏やかであっても真の健康な生活とはかけ離れた状態にあります。これらを解消し、健康寿命を延ばそうというのが食生活指針の目的です。
食生活指針は身体的な面だけではなく、日本の食文化や伝統を守っていこうという食の文化的な側面についても記されています。世界でも注目を集めている和食について理解を深めることや、社会問題にもなっている食の安全についても興味関心を持ち自分のこととして考えようというのが食生活指針の考え方です。
◇食生活指針の10項目
食生活指針には10の大きな項目が設定されています。以下は農林水産省HPからの引用です。
1.食事を楽しみましょう
2.一日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを
3.適度な運動とバランスの良い食事で、適正体重の維持を
4.主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを
5.ごはんなどの穀類をしっかりと
6.野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて
7.食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて
8.日本の食文化や地域の産物を生かし、郷土の味の継承を
9.食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を
10.「食」に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう
この10項目から3つピックアップして詳しく見ていきましょう。
・一日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを
ここでは規則正しい食事の大切さを説いています。
大人は仕事で、子どもも塾や習い事で忙しい人が増え食事のリズムが乱れがちで、特に朝食を食べない人が多くいます。しかし朝食は眠っている脳や体を目覚めさせるためにとても大切な役割を果たしているのです。昼食まで何も口にしない人は本来の力を発揮しきれません。規則正しく食べることは生活リズムを整えることにもつながります。早寝早起き+1日3食で健康な身体を手に入れましょう。
・食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて
食塩の摂り過ぎは高血圧の原因となり、心臓病や脳卒中のリスクを高めます。日本人の食事摂取基準では男性8g未満、女性7g未満が目標とされていますが摂り過ぎ(平均は10.4g)の人が多くいるのが現状です。減塩の意識をさらに強めることが生活習慣病の予防につながります。
もう一つの脂肪の摂取量に関しては意外にも適正の範囲内の人が多くなっています。しかしどんな食品から摂取するのかという“質”にも気を配ろうというのが今の考え方です。体にいい油脂というのは魚の脂(DHAなど)やナッツ類(リノール酸など)が挙げられます。これらも摂り過ぎには注意が必要ですが美容や健康に良いとされているため食生活に取り入れてみましょう。
・食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を
私たちの住む日本は食べ物に溢れていて、食べ残しや賞味期限切れでの食品の廃棄が問題になっています。その量は一年間で約2800万tにもなり、その中でもまだ食べられるのに捨てられる“食品ロス”が約630万tです。一方世界に目を向けると飢餓に苦しみ命を落としている人も少なくありません。
この現状を皆さんはどう思いますか?日本人の食べ物に対する“ありがたい”という気持ちが薄れてしまっていのではないでしょうか。おなかいっぱい好きなものを食べられるこの時代を当たり前と思わずに、一人ひとりが「もったいない」という意識を持てばこの廃棄量は劇的に減少するでしょう。
個人でできることと言えば食べ残しをしない、食材を買いすぎない・使い切る、賞味期限と消費期限の違いを知るなどがあります。まずは自分に出来ることから始めてみましょう。