食育の実践において、食前の「いただきます」の意味を子供たちに伝えることは大変重要なことです。自分のために用意された食事に関わった人たちへの感謝、食べ物となって命をくれた動植物たちへの感謝、そういった「ありがとう」の気持ちを伝える大切な言葉なのだということを忘れずに毎日の食卓を囲みましょう。今回は、食事のあいさつについてみていきたいと思います。
世界の「いただきます」
日本では、「いただきます」は食への感謝を込めた挨拶として大切にされていますが、実は、世界的にみると大変珍しいといいます。食事をする相手に対して「どうぞ召し上がれ」や「お先にいただきます(食べます)」というような挨拶をする国はいくつかあるようですが、食に対して感謝の挨拶をするという習慣のある国は少ないのだそうです。
「いただきます」の意味を伝える
まだ、「いただきます」の意味を知らない子供たちには、ぜひ一緒に食卓を囲む大人が教えてあげてほしいと思います。ただ食事前のルーティーンとして言わされているという感覚ではなく、大切な意味のある言葉であることを理解することで、食に対しての意識も大きくかわってくるでしょう。
【命のつながりへの感謝】
私たちが毎日の食事で食しているのは、肉や魚などの動物、野菜や果物などの植物というすべて命ある生き物です。その生き物たちの命を絶ち、食べることで私たちは生きています。「いただきます」には「あなたの命を私の命にさせて『いただきます』」という命のつながりに対しての感謝の意味が込められているのです。
【食を作ってくれた人々への感謝】
目の前にある食事が届くまでには、生産から流通、消費の各過程で様々な人々の手が関わっています。食材を育て収穫してくれた人、食材を運搬してくれた人、食材を販売してくれた人、そしてその食材を自分や家族のために心を込めて調理してくれた人、たくさんの人々の支えがあって毎日の食事はできています。そのような人々への感謝を忘れてはいけません。
「いただきます」の意味を伝える絵本
生きるということは他の生き物の命をいただくということ…これをテーマにした絵本や児童書もでています。子供だけではなく大人も一緒に「いただきます」をもう一度考えてみましょう。
【おすすめの絵本】
・「おべんとうさん いただきます」作:堀川真 出版:教育画劇
・「いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日」原案:坂本義喜 作:内田美智子 絵:魚戸おさむとゆかいななかまたち 出版:講談社
・「きょうからはじめる食育の絵本①いただきます」作:久住昌之 監修:服部栄養料理研究会
読み聞かせなどを通すことでよりイメージしやすくより子供たちの心に届きやすくなります。
「いただきます」は食への感謝を伝えるだけではありません。食事と向き合うための自分自身へのけじめにもなります。食後の「ごちそうさま」という挨拶も同様です。自然や相手への感謝の心を大切にする日本の素晴らしい食習慣をこれからもずっと絶やさぬよう、大人から子供たちへしっかりと伝えていかなければいけません。毎日の家庭の食卓からみんなそろって食事に手を合わせ「いただきます」「ごちそうさま」の習慣を身につけていきましょう。