よく噛んで食べることは、子供から大人まですべての人にとってとても大切なことです。よく噛んで食べることには様々なメリットがありますが、昔に比べて食の内容や環境が大きく変化した影響により、よく噛んで食べる人が少なくなってきていることが問題となっています。食事をよく噛んで食べることの大切さについて振り返り、毎日の食卓から意識していくようにしましょう。
よく噛むことの効用
「一口30回噛みましょう」とよく言われますが、実際の食事でこのことが実践できている人はどの位いるでしょう。一口30回を意識してみると、咀嚼時間がとても長いと感じる人が多いことでしょう。しかし、よく噛むことで得られる効用はたくさんあります。
・唾液に含まれる消化酵素の働きで、消化しやすくなる。(胃腸の負担が軽減される。)
・唾液の分泌が増えることで、口腔環境が良くなり、虫歯予防につながる。
・よく噛むことで、食べ物の味や香りが広がり、味わいが豊かになる。
・食べ物がよくかみ砕かれることで、胃液と混ざりやすくなり、食中毒予防につながる。
・噛む刺激で、あごの筋肉が発達し、永久歯の歯並びがよくなる。
・あごを動かす刺激で、脳が活発に働くようになり、集中力や感情をコントロールする力がアップする。
・よく噛むことで必然的にゆっくりとした食事時間になり、満腹中枢がタイミングよく刺激されるため、過食を防ぐ。
以上のように、心身の健康にとってとても大切なことであることが分かります。
「噛めない」のか「噛まない」のか
特に小さな子供においては、「噛めない」のか「噛まない」のかを大人が見極めることも大切です。「噛めない」というのは能力の問題に、一方「噛まない」は意思の問題となるためです。これには別々のアプローチが必要になってきます。
【噛めない場合のアプローチ】
この場合は、「よく噛んで食べなさい」という言葉がけをするよりも、一緒に噛む練習をすることや、今の能力でしっかりと噛めるような柔らかさ、形状に調理するといったアプローチが効果的です。無理して噛めないものを与え続けてしまうと、丸飲みや飲み物などで流し込む癖がついてしまうこともありますので、注意が必要です。すぐにとはいかなくても、成長するにしたがって徐々に固いものも噛めるようになってくるので、焦らず子供の成長をサポートしましょう。
【噛まない場合のアプローチ】
噛めるのに噛まないというのは、子供は大人と違い、まだ噛むことのメリットを認識できていないためという場合があります。そのため、「食べたら早く遊びたい」などの落ち着かない気持ちの時などに特に早食いになってしまうケースが多くみられます。この場合は、一緒に食事をしている大人がよく噛んで食べる姿を見せたり、よく噛むことのメリットを伝えていくアプローチが効果的です。
「よく噛んで食べる」ことの食育的意義
大人から子供まで、よく噛んで食べる習慣は食育の目的である「健康に生きるための力」の1つであると言えます。加えて、「食への感謝」や「豊かな心を育む」ことにもつながっていると思います。どんな食べ物も、生産から食卓に上がるまでたくさんの人々によって支えられています。そうした流れによって自分の元に届いた食事を家族や友達と一緒にゆったりとした気持ちで食べるということは、とても大切な食育であると思います。ぜひ、今日から「よく噛むこと」を意識して食卓を囲んでみましょう。