
「三つ子の魂百まで」という諺があるように、三歳までの経験は一生涯を決めると言われています。
人の五感の一つである味覚も、三歳までに決まると言われています。そして、十歳までに多く食べたものを一生涯食べたくなるとも言われています。このように、幼少期の味覚や食べるものは今後の人生においてとても重要です。
三歳まではできるだけシンプルな味付けかつ薄味で、味覚をつくってあげましょう。
舌の味蕾
舌の表面には、「味蕾(みらい)」と呼ばれるブツブツのものがありますが、これは実は器官です。味は、95%が嗅覚情報、残り5%が味覚情報と言われていますが、この味蕾で味を感知し、味覚神経を介して脳に信号が送られて私達は味を感じます。
この味蕾は胎児である妊娠7週目位に作られ始め、14週位に大人とほぼ同じ構造になります。味蕾の数は、生まれたばかりの赤ちゃんには1万個もあります。
その数は生後3カ月位まで増え続け、生後3カ月位にピークを迎えます。5カ月位になると味蕾細胞の数はそのままで、味覚だけが鈍感になってきます。それまでは味覚が研ぎ澄まされているので、ミルクを飲まなかったり、ミルクの銘柄によって飲まなくなったりするのはこのためです。味覚が鈍感になり始め、内臓も発達してきたこの時期以降に離乳食を受け入れられるようになります。
そして、味蕾は刺激物や喫煙などで摩耗するため、成人男性では約7000個、高齢男性では約3000個に減少します。
五味の役割
私達が感じる味覚には五種類あり、これを五味といいます。この種類と特徴は下記のとおりです。
甘味・・・エネルギー源である糖の存在を知らせる
塩味・・・体液のバランスに必要なミネラル分の存在を知らせる
酸味・・・腐敗している、果物などが未熟であることを知らせる
苦味・・・毒の存在を知らせる
うま味・・・体をつくるのに必要なたんぱく質の存在を知らせる
このように、五味とは必要なものを選別する力です。
赤ちゃんが母乳やミルクを飲んでいるうちは、エネルギー源として必要な「甘味」や「うま味」「脂肪の味」を本能的に好んで食べます。
子どもが苦い野菜を好まない事が多いのは、実は本能的に苦味が毒の存在を知らせるものだからです。
しかし、大人になるとこの、ピーマンやしし唐などの苦味がおいしく感じます。幼少期に苦くて食べられないものは、繰り返し食べて慣れていく事により、食べられるようになります。
食べられるものを増やしてあげる
子どもが食べられないというものは、単に味が苦手だからというだけではありません。
味だけでなく匂いや、触感、大きさにより、食べやすいもの、食べにくいもので好き嫌いが発生している事が多いのです。
一度食べなかったからといって諦めずに、大きさを変えたり、触感を変えてみたりと工夫してみましょう。食べる事ができた、また、食べている時に楽しかった、等の記憶で、子どもは食べる事ができるようになります。
味覚を育てる
三歳までに味覚が作られますが、味付けは薄味が基本です。三歳までに濃い味付けに慣れてしまうと、濃い味しか食べられなくなってしまいます。
それにより、塩分の摂りすぎによる生活習慣病も招きかねません。ケチャップやマヨネーズ、等味付けの濃ものはできるだけ薄め、薄味に慣れさせましょう。
子どもが本能的に好む「うま味」はだしでつくる事ができます。カツオや昆布の出汁をとり、使用する事をおすすめします。
また、一歳までは素材の味だけで食べさせていた場合も、この出汁を足す事により、うま味が加わりさらに食べやすくなります。味の95%を決める嗅覚情報出汁の「香り」でも、おいしいと判断させる事ができます。
このように、工夫次第で子どもの舌をつくる事ができます。ファストフードやお菓子の濃い味は強い印象に残り、また砂糖や添加物の作用により、脳内に麻薬と同じ幸福経路を作り出し、依存してしまいます。砂糖はソフトドラッグと言われています。まだ幼いうちは、親がつくる環境が子どもの体をつくる事になります。
出汁や野菜や果物本来の甘さや風味を使い、砂糖や濃い味付けにしなくても十分においしいと感じる、子どもの味覚を育てましょう。