本来食べられるのにも関わらず、食品を廃棄してしまう問題は「フードロス(食料廃棄)」と呼ばれ、日本のみならず世界中で大きな問題となっています。世界では人が消費するために生産された食料の約1/3(約13憶t)が廃棄されています。また、日本においては、年間約630万tの食料が廃棄されていて、その内訳をみると、食品関連事業から約330万t、一般家庭から約300万tと言われています。現在、日本の食料自給率はカロリーベースで38%ほどと低く、大半を輸入に頼っているのが現状です。大量の食料を輸入しながら大量に廃棄しているという状況は「もったいない」の精神に大きく反しているものに他ならず、食育の観点からも積極的な改善が望まれる課題となっています。今回は、フードロス削減についての様々な取り組みをご紹介していきたいと思います。
食育の観点からのフードロス削減
第三次食育推進基本計画の重点課題の1つとして「食の循環や環境を意識した食育の推進」というテーマが掲げられました。具体的には、「生産から消費までの食べ物の循環を理解するとともに、食品ロスの削減等、環境へも配慮した食育の推進を目指す」というものです。これを受けて、関係省庁をはじめ地方自治体、民間企業などにおいて様々な取り組みが始まっています。
国・自治体の取り組み
農林水産省:「FOOD ACCTION NIPPON」
日本の食を次世代へ残し、創るために民間企業、団体、行政等が一体となって推進する、国産農林水産物消費拡大のための取り組みです。
消費者庁:「食べ物のムダをなくそうプロジェクト」
消費者がフードロスへの認識を高め、意識を改善するための取り組みです。関係省庁、自治体、教育機関との連携によって「おいしい食べきり運動」など様々な運動や取り組みが展開されています。その1つとして、「クックパッド・消費者庁のキッチン」があります。利用者の多いクックパッドを活用し、食べきり、使い切りをテーマにした食材を無駄にしないレシピなどを公開しています。
環境省:学校給食の食べ残しを減らすための食育および環境教育の検証
札幌市や松本市をモデル地区とし、食育や環境教育が学校給食の食べ残しの減少や意識の変化につながるかの検証を実施しました。授業で途上国の食料不足や食のリサイクルなどについて学んだ結果、食べ残しが3割減った学校や、食べ物への感謝、食品ロスを減らす心掛けなど意識の変化がみられたそうです。
各地方自治体:「おいしい食べきり運動」の実践として各自治体では「宴会5箇条」や「30・10運動」の普及、飲食店への「小盛りできます」の表示や「ドギーバッグ(持ち帰り)」の対応要請などが展開されています。
※宴会5箇条…宴会等での食べ残しがなくなるように心がける5箇条
1)適量注文2)しっかり食べるよう声掛け3)開始30分終了10分は食べきりタイム
4)食べきれない料理は分け合う5)食べきれなかった料理は確認して持ち帰る
※30・10運動…宴会等のはじめ30分とおわり10分は自分の席で食事を楽しむことを推進する運動
フードロスの課題は、1人1人が「残さない」「捨てない」「買いすぎない」という日常の小さな心掛けによって解決していくことができると思います。この課題を通して食育のテーマでもある「食への感謝」「食を与えてくる環境への感謝」の心を子供から大人まで改めて養っていきましょう。