私達は五感という、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚で物事を判断しています。また、五感による知覚の割合は視覚器官が83%、聴覚が11%、臭覚3.5%、触覚1.5%、味覚はたったの1.0%というデータもあります(『産業教育機器システム便覧』より)。食事をとる際の観点からも、おいしさは体全体で感じるものであることがわかります。
今回は聴覚情報から育む食育です。日本語には、オノマトペと言われる擬音語・擬声語・擬態語が豊富です。このオノマトペは想像力を育み豊かな食体験を作る事ができます。
食事を作る音を聞こう
例えば、卵焼きを焼く場面を言葉で表してください。という問いかけに対して、「卵をコンコンと割って、シャカシャカ泡立て、中身をじゅわっとフライパンに落とし、ジュージュー焼く。」と答える事が出来ます。
このオノマトペにより、卵焼きを作る場面を容易に想像する事が出来ます。食事を作る際の音を聞くことは、想像力を高める事にもつながります。
豊かな食体験といえば、楽しく会話をしながら、コミュニケーションをとりながら食事をとる事が挙げられますが、食事のにおいを味わう事、様々な食材に触れる事、そして食事を作る際の音、食べる時の音に耳を澄ませる事も豊かな食体験の一つです。
食事中、「どんな音がする?」と子どもに聞いてみましょう。口に入れて噛んだ時の、揚げ物のサクサクという音、生野菜のしゃきしゃき、ぽりぽりという音、お鍋のグツグツという音、鉄板の上でお肉が焼けるジュージューという音は私達大人にとっていつの間にか定着してきたオノマトペです。
私達が、「卵をコンコンと割ってね」と普段から何気なく口にしている為、覚えていきます。この音に関心を持たせるように質問したり、あえて擬音語を使い料理の説明をしてみましょう。
BGMを使おう
歌のフレーズで昔の楽しい記憶が蘇ったり、雰囲気がよくなったり、リラックスをしたりと、音楽、BGMの効果はどのシーンでも絶大です。それは食事においても同じです。
例えば、クリスマスのご馳走を頂いている時に、無音よりもクリスマスミュージックがかかっていた方が雰囲気がよくなり、とても楽しい食事になります。無音は時に緊張感を呼びます。会話を盛り上げたいとき、リラックスしながら食事をとりたい時にはこのBGMをうまく取り入れるといいでしょう。あまり主張しない大きさのBGMは、食事中の雰囲気も和ませてくれます。
音楽だけではなく、キャンプのいった時の川のせせらぎの音や、海のさざ波の音、森林の中の小鳥のさえずり等、自然界の音も素晴らしいBGMになります。その中での食事はとても楽しいものになるでしょう。
食事の楽しい記憶をたくさん作ってあげる事が、生涯にわたる食への関心を高める事に繋がります。
想像力を育もう
子どもが小さい時の食育に関するコミュニケーションの一つとして、「音あて遊び」があります。
「これはなんの音でしょう?」「何を切っている音でしょう?」と質問をするだけなのですが、「ヒントは、赤い色をしています」というヒント等も与えながら音に集中させ、今までの経験から記憶をたどり答えを見つけ出させます。
とても単純な遊びですが、音を聞く事にも集中でき、同時に想像力も高めてくれます。
このように、子どもにとって「楽しい」事を一緒にする事は、生涯の食への関心の形成に大切な幼少期に、様々な方面から「食」を楽しいものにする土台作りにつながります。
そしてこの聴覚に関しては、子どもの想像力を高めるものになります。